台北裁判(ハヤカワ・ミステリ文庫)

 『台北裁判』書評――判決が下る瞬間、心が揺れる

手に取るべき理由

台湾の弁護士・映画監督である唐福睿が描く本作は、死刑存廃や移民労働者問題、先住民差別など、台湾社会の「現在」を鋭利なミステリに落とし込んだ一冊だ。舞台は「国民法官制度(台湾版陪審制)」が絡む法廷。ハヤカワ・ミステリ文庫という“読みやすさ”の外装に、600ページ超の重いテーマとスピード感が同居する。

あらすじ(ネタバレ無し)

基隆港に戻ったマグロ漁船で船長一家が惨殺され、インドネシア人船員が逮捕される。第一審は死刑判決。控訴審を担当する公設弁護人トン(アミ族出身)は、沈黙を貫く被告を前に事実の裏側を探るが、世論と政治的圧力が容赦なく襲いかかる。六人の素人国民法官は「命」を賭けた量刑を迫られ、法廷は緊張の臨界点へ――。

読みどころ

1. 法廷劇×社会派ミステリの高密度

一章=一廷日で進行するため、ページをめくるたびに証言や証拠が更新されるライブ感。

法律用語と通訳ミスが伏線となり、推理の面白さと制度批評が同時に機能する。

2. 多層的な差別構造の可視化

先住民、移民労働者、漁業資本、メディア――複数の “弱者と強者” が交差し、読者自身の無意識の偏見を照らす。

トンが抱える「アミ族としてのアイデンティティ」と弁護士職務の葛藤が、物語に人間的厚みを与える。

3. エンタメ性と問題提起の両立

逆転につぐ逆転で最後まで結末を読ませない一方、死刑の是非を読者に突きつける。

章間に挿入されるニュース速報やSNSコメントが“傍聴席”視点を演出し、没入感を高める。

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